Step 1: 実践に向けた準備

/実践ガイド

Step 1: 実践に向けた準備

(1)組織・事業の現状把握

社会的インパクト・マネジメントの実践の第一歩として行うべきことは、組織および事業の現状把握です。社会的インパクト・マネジメントの取り組みをより効果的なものにするためには、組織や事業の特性や状況、課題等を踏まえた上で、目的やアクションを設定することが重要になります。それが適切でないと、過剰/過小、あるいは的外れな取り組みを行うことにもなりかねません。

 組織および事業について確認すべきポイントの例を図表2に示します。組織文化・ガバナンスについての詳細は「社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン」の「5章 組織文化・ガバナンス」をご覧ください。


組織理念・目標

・組織として、どのような理念や方針、目標を持っているか?
・社会的インパクト志向は、組織の理念や方針にマッチするか?

組織および事業のステージ

・組織として、どのような理念や方針、目標を持っているか?
・社会的インパクト志向は、組織の理念や方針にマッチするか?

利用可能資源・協力体制

・利用可能な資源は、何が、どの程度あるか?
・評価に関する知識やスキルを組織メンバーは持っているか?
・どのような組織内外の協力体制があるか?

組織文化・ガバナンス

・組織の理念や方針、目標は、組織メンバーに浸透しているか?
・社会的インパクト志向について、組織メンバーは理解を示しているか?
・各ステークホルダーをどのような存在として位置付けているか?
・組織・事業についての意思決定の主体は誰か?
・情報を共有・報告すべき対象は誰か?
図表2:組織・事業の確認ポイントの例

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(2)評価の目的の設定

社会的インパクト・マネジメントの実践のためのツールとなるのが社会的インパクト評価です。その最初のステップは、評価の目的を明確に設定することです。本ガイドでは、評価の実践主体を事業者と想定してあり、その大きな目的としては「学び・改善」と「説明責任」の二本柱がありますが、事業者として、評価からなにを学び・事業改善へとつなげたいのか、誰にどんな説明責任を果たしたいのか、これらについてまず内部でよく話し合いましょう。

 この最初のステップが大切な理由のひとつは、評価のあり様は一様ではないからです。社会的インパクト評価は単一または複合的な事業や取り組みの社会的な効果や価値に関する情報を可視化するものですが、その活用方法は多岐にわたります。例えば社会的インパクト評価のプロセスの中で明らかにされるプログラム・ロジックを検討することで、ロジックの改善を図ることもできるでしょう。あるいは、想定されるプログラム・ロジックと実際のプロセスのかい離を評価することで、事業プロセスの改善を行うこともできます。さらには、こうしたプログラム・ロジックやプロセス以外に、そもそも事業の期待する社会的変化のレベルと、実際のインパクトの差異を測ることで、どのように事業を変化させることによって、期待するインパクトを達成することができるかについての戦略構築のヒントを得ることもできるでしょう。

 さらに、社会的インパクト評価に着手する際に重要な点として、その活用方法の想定があります。評価には、「報告書の作成を目的化されて行われ、特に活用されない」という課題がつきまといますが、Step 7 で記述するように、社会的インパクト・マネジメントでは、単に「評価をすることで説明責任を果たす」のではなく、評価内容を事業者として活用する、ステークホルダーとの話し合いの協議に使う、評価を活用してどのような経営判断につなげるかを考える等、有益な活用方法があります。

 これらを含め、社会的インパクト評価の実施による事業者としての期待を明確化することが、意味のある「社会的インパクト・マネジメント」を実施する鍵となることを理解してください。

(3)社会的インパクト評価の5+2原則の理解

適切な意思決定や報告がなされるためには、「社会的インパクト評価の5+2原則」にしたがって評価が行われる必要があります。各原則の内容については「社会的インパクトについて」、または「社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン」をご覧ください。

 評価のプロセスや方法は、評価の目的や、評価を報告する先が誰かによって変化するので、「正しい」手法というのは定義しにくいものです。例えば報告先が組織の理事会なのか、経営層なのか、あるいはスタッフ・レベルで共有を図るのかによっても、評価の範囲や手法は異なってくることでしょう。あるいは、事業の評価対象をどのように設定するのかによっても、何をインプットとし、何をアウトプットとするのかも異なってくる可能性があります。

 こうした評価手法の幅の広さにおいて、それらの評価が適切かどうかを判断するために、上述の評価の原則を活用してみましょう。これらに立ち戻って、自身の評価手法が適切かどうかを振り返ることが、適切な評価の実施につながります。

 原則の二つ目に挙げられているのが、重要性に基づいた境界設定やステークホルダーの選択です。社会的インパクトの評価においては、広範なステークホルダーを含めることを推奨していますが、実際の評価においては、なんらかの優先順位を決めて取捨選択を行う必要があります。それが、評価の目的等に鑑みた重要性の原則です。

 また社会的インパクト評価に特徴的な原則が、「ステークホルダー(利害関係者)の参加・協働」です。社会的インパクト評価の対象となる社会的価値は、本来的には主観的な価値の集合体であり、客観的な評価が難しいものです。異なる観点を持ったステークホルダーが評価に参加し、妥当性を確認することで、一定の客観性を担保しようとする取り組みが、社会的インパクト評価では多く行われています。

(4)評価デザインの検討

評価の目的を設定し、「社会的インパクト評価の5+2原則」を踏まえる工程を含め、社会的インパクト評価の実践のステップを構築することが、評価デザインを考えることになります。

 社会的インパクト評価において重要なことは、事業活動の結果の社会的変化が明らかになることです。そのためには、事業の前後において一貫性のあるデータを収集することが必要になります。一般に「評価」という言葉は、事業が終了した後の振り返りを想起させるかもしれませんが、実際には、評価の実施にあたっては、事業開始前に評価の計画を作成し、基礎となるデータ収集の計画を策定しておくことが重要です。

 事業の実施にあたって、事業計画の策定と同時期に、評価計画を作成しておくことが意味のある評価の実施のキーとなります。例えば、事業実施の後に、事業実施前の時点でのデータ収集をしようとしても、難しいことも多いでしょう。事前評価では、事業開始前にどのようなデータを収集しておくか、また事後のデータとどのような比較をするかについて十分な計画を立てておきましょう。

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