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ツールセットの理解を促進するための事例

2020年05月16日

前述のとおり、「地域・まちづくり」分野では、多様な目的で多様なステークホルダーが多様な取り組みをしており、他の分野別例で示しているような「一般的なロジックモデル」が抽出しにくい分野と言えます。また、例えば「地域の活性化」という最終アウトカムは1つのNPOが単独で達成することは困難であり、行政やNPO、企業、地域住民等、様々な地域の関係者が協働することではじめて達成されるといったように、他の分野と比べて、事業の実施が最終アウトカムにまでつながる過程が遠く、さまざまな方面に波及することから、ロジックモデルを作成するにあたってのイメージがわきにくい分野と言えます。

そこで、ここでは、ツールセットの理解を促進するため、2つのNPO法人の活動の例を紹介し、各NPOが事業を実施することによるアウトプットからアウトカムに至る流れ、つまり、NPOをはじめとする各団体の活動が最終的にどのように「地域の活性化」等の目的につながっていくのかがわかりやすいよう示します。

NPO①:バラを活かしたまちづくり

NPO①は、地域資源であるバラを活かしたまちづくりを進めている団体です。

図表4にNPO①のロジックモデルを示しています。以下、ロジックモデルの作成方法を示しますので、図表4と照らし合わせながら見てください。

図表4:地域・まちづくりのロジックモデル(NPO①)

事業の目標と受益者の設定

NPO①の「事業の目標」は、「観光客の増加による地域経済の活性化」、「住民の地域への愛着の向上」といったものになります。例えば、「バラを活かしたまちづくりを進めることにより、観光客の増加による地域経済の活性化、住民の地域への愛着の向上を図る」と設定できるでしょう。

そして、その「受益者」は、主に地域に住む住民になると考えられます。バラを観に訪れる観光客も受益者ととらえることもできますが、ここでは地域経済の活性化や住民の地域への愛着の向上を目標としていることから、地域住民を「受益者」と設定します。

直接アウトカムの設定

NPO①は、具体的な事業として、「地域住民との協働によるバラの植栽と育成」、「『バラの市』イベントの開催」の2つを行っています。

まず、「地域住民との協働によるバラの植栽と育成」を実施することにより、「地域住民のバラの育成への参加」が増えると考えられます。これがアウトプットに当たります。そして、それはさらに「地域の人と人との交流機会の増加」につながっていくと考えられます。これが直接アウトカムに当たります。

次に、「『バラの市』イベントの開催」を実施することにより、「地域への観光客の増加」がみられるようになります。これがアウトプットに当たります。そして、それはさらに「観光リピーターの増加」や「近隣商店街の売り上げ増加」につながっていくと考えられます。これらが直接アウトカムに当たります。

中間アウトカムの設定

「地域住民との協働によるバラの植栽と育成」事業では、直接アウトカムである「地域の人と人との交流機会の増加」が起きることにより、「住民ネットワークの強化」が図られると考えられます。これが中間アウトカムに当たります。

「『バラの市』イベントの開催」事業では、直接アウトカムである「観光リピーターの増加」や「近隣商店街の売り上げ増加」が起きることにより、「地域の知名度の向上」や「地域経済の好循環」が起きると考えられます。これらが中間アウトカムに当たります。

最終アウトカムの設定

 中間アウトカムである「住民ネットワークの強化」、「地域の知名度の向上」、「地域経済の好循環」が起きることにより、「地域コミュニティの活性化」、「地域貢献意識の向上」、「住民の地域への愛着の向上」、「地域経済の活性化」が図られると考えられます。これらが最終アウトカムに当たります。

NPO②:歴史的な街並みの保存活動

NPO②は、歴史的な街並みの保存活動を行っている団体です。

図表5にNPO②のロジックモデルを示しています。以下、ロジックモデルの作成方法を示しますので、図表5と照らし合わせながら見てください。

図表5:地域・まちづくりのロジックモデル(NPO②)

事業の目標と受益者の設定

NPO②の「事業の目標」は、「伝統文化の保存と継承」、「観光客の増加による地域経済の活性化」、「住民の地域への愛着の向上」といったものになります。例えば、「歴史的な街並みの保存活動を行うことにより伝統文化の保存と継承を図るとともに、観光客の増加による地域経済の活性化、住民の地域への愛着の向上を図る」と設定できるでしょう。

そして、その「受益者」は、主に地域に住む住民になると考えられます。歴史的な街並みを観に訪れる観光客も「受益者」ととらえることもできますが、ここでは地域の活性化を目標としていることから、地域住民を「受益者」と設定します。

直接アウトカムの設定

NPO②は、具体的な事業として、「歴史的建築物の保存に関する相談事業」、「地域住民による歴史的街並みの価値発見ワークショップの開催」、「歴史的街並みのまち歩きイベントの開催」の3つを行っています。

第1に、「歴史的建築物の保存に関する相談事業」を実施することにより、「相談者の増加」が図られると考えられます。これがアウトプットに当たります。そして、それはさらに「地域住民の歴史的街並みの保存意識の向上」につながっていくと考えられます。これが直接アウトカムに当たります。

第2に、「地域住民による歴史的街並みの価値発見ワークショップの開催」を行うことにより、「ワークショップ参加者の増加」がみられるようになります。これがアウトプットに当たります。そして、それはさらに「地域住民の歴史的街並みの保存意識の向上」につながっていくと考えられます。これが直接アウトカムに当たります。

第3に、「歴史的街並みのまち歩きイベントの開催」をすることにより、「イベント参加者の増加」が見られると考えられます。これがアウトプットに当たります。そして、それはさらに「地域の知名度の向上」や「近隣商店等の売り上げ増加」につながっていくと考えられます。これらが直接アウトカムに当たります。

中間アウトカムの設定

「歴史的建築物の保存に関する相談事業」では、直接アウトカムである「地域住民の歴史的街並みの保存意識の向上」が起きることにより、「歴史的建築物の修復、再建」が図られると考えられます。これが中間アウトカムに当たります。

同様に、「地域住民による歴史的街並みの価値発見ワークショップの開催」事業では、直接アウトカムである「地域住民の歴史的街並みの保存意識の向上」が起きることにより、「歴史的建築物の修復、再建」が起きると考えられます。これが中間アウトカムに当たります。

「歴史的街並みのまち歩きイベントの開催」事業では、直接アウトカムである「地域の知名度の向上」が起きることにより「地域への観光客、リピーターの増加」が起きると考えられます。これが中間アウトカムに当たります。

最終アウトカムの設定

中間アウトカムである「歴史的建築物の修復、再建」、「地域への観光客、リピーターの増加」が起きることにより、「伝統文化の保存と継承」、「住民の地域への愛着の向上」、「地域経済の活性化」が図られると考えられます。これが最終アウトカムに当たります。

NPO等の活動が地域のアウトカムにまでつながっていくイメージ

最終的に、「地域・まちづくり」分野の最終アウトカムは、「地域コミュニティの活性化」や「地域経済の活性化」といった地域の活性化につながる成果として現れるとともに、「住民の地域への愛着の向上」や「地域貢献意識の向上」といった地域住民の意識向上につながっていくことが多くなります。

 ただ、これらの最終アウトカムは、その地域で行政やNPO、企業等が実施している多様な政策があわさって実現される、地域全体のアウトカムとも言えるものであり、一つのNPOだけで実現することは難しいです。特に、「地域・まちづくり」分野では、他の分野と比べてこの傾向が強くなると考えられます。しかしながら、自分の団体の活動がいかに最終アウトカムにつながっていくかを意識してロジックモデルを作成すること自体は重要です。そのイメージを図表6に示していますので、参考にしてください。

図表6:NPO等の活動が地域のアウトカムにまでつながっていくイメージ

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