SIMI:取り組み事例

2020年10月05日

【取り組み事例】コペルニク・ジャパン

コペルニクは、アメリカ、インドネシア、日本にて計4つの法人を持ち、「ラストマイル」 と呼ばれる途上国で最も支援が届きにくい地域において、貧困削減に繋がる革新的なテクノロジーの開発、検証、普及に取り組んでいます。

コペルニク・ジャパン代表理事の天花寺宏美氏に同社の社会的インパクト・マネジメントについてお話を伺いました。

■カテゴリ

事業分野 途上国支援
事業開始年 2010年(日本では2011年に事務局を、2014年に法人を設立)
組織形態 一般社団法人
組織規模 約60名

■基本情報

事業名称
実施地域 インドネシア 他
事業概要 「ラストマイル」 と呼ばれる途上国で最も支援が届きにくい地域において、民間企業や公的機関などのパートナーと連携しながら、貧困削減に繋がる革新的なテクノロジーの開発、検証、普及を行う。事業は、大きく以下の3つにわけられる。
1.実証事業:小規模・短期間の実証事業により人々の生活向上につながる解決策を見出す
2.アドバイザリー・サービス:現地ネットワークを活かし、顧客企業等に専門的なコンサルティングサービスを提供する
3.テクノロジーの普及:現地のニーズに合致する革新的でシンプルなテクノロジーを提供する
運営団体 一般社団法人コペルニク・ジャパン
事業URL https://kopernik.info/jp

■社会的インパクト・マネジメントの概要

はじめたきっかけ 限られた資金をより効果的に使用するにはどうしたらよいのか、今行っている活動は本当に意味があるものなのかを常に確認しながら事業を行うという意識が設立当初から高かったこと。
実践内容 事業対象者に実際に効果が表れるかどうかを試行する実証実験(lean experimentation)を活用して実施の判断を行う。その結果を踏まえて、次のフェーズに行くかどうかを決定する。
取り組んでよかったこと 現場に効果がある事業だけをきちんと残していけること。また、資金調達をする際やパートナーに対して説明がしやすいこと。
今後の課題 事業実施と比べ、社会的インパクト計測にコストをかけることに対する理解がまだまだ少なく、仕組みも整っていない。しかし、徐々に事業のインパクト計測の重要性は認識され始めており、より多くのニーズを実感している。
資料URL 活動内容(実証実験)
https://kopernik.info/jp/コペルニクについて/コペルニクの活動/実証実験
プロジェクトレポート
https://kopernik.info/jp/インサイト・過去のプロジェクト/プロジェクト・レポート
年次報告書
https://kopernik.info/jp/コペルニクについて/年次報告書
ダイヤモンドオンライン記事
https://diamond.jp/articles/-/218035?page=4

社会的インパクト・マネジメントの取り組みインタビュー

1、社会的インパクト・マネジメントをはじめたのはなぜですか?

コペルニクは、途上国の社会課題を解決するアメリカのNPOとして始まり、設立当初から実施事業に対する効果検証は行っていました。

創設者の中村俊裕は国連出身で、より受益者に近いところで何かしたいと当法人の源流となるアメリカのNPOを立ち上げたのですが、国連に比べて使える金額は小さくなりました。そのため、限られた資金をより効果的に使用するにはどうしたらよいのか、今行っている活動は本当に意味があるものなのかを常に確認しながら事業を行うということへの意識が、最初から高かったのです。

 また、よくNPOの現場では社会的インパクト・マネジメントを取り入れるハードルが高いと聞くことがあります。コペルニクは民間出身者が多かったり、企業の製品開発に関わっていることもあり、、企業がR&Dを行う際のマネジメントのアプローチにも理解があるため、そんなに変わったことをしているという感覚はないですね。。

2.社会的インパクト・マネジメントとして、具体的には何をしているのですか?

 現場とのつながりを活かして、RCT(ランダム化比較試験)のような厳密な形式ではないものの、事業対象者に実際に効果が表れるかどうかを試行する実証実験(lean experimentation)を行っています。RCTは、事業対象者を介入群と対照群に無作為に分けて、介入群のみ事業を実施し、両群の結果を比較することによって事業の効果を検証するという方法です。通常のRCTだと大規模になりますが、コペルニクでは小規模・短期間の実証実験を行うことで、RCTの金銭的・時間的な課題をクリアしています。サンプル数が少ない場合は、無作為に分けるというより、似たようなグループを選定する、という形が多いです。また、行っていることが製品開発・事業開発的な面が大きいのもあって、小さく実証して本当に効果のあるものだけ残し、どんどんPDCAを回していくというやり方が合っていると思います。

 常に現場にスタッフがいるので、自分たちが現場で拾ってきたニーズが事業アイデアの起点になることもありますし、パートナーから相談がきっかけとなってブレインストーミングをすることもあります。そうしたものの中で良さそうなアイデアをリストにしておき、数か月に一度行われる審査会で、実証実験として実施するかどうかを決めています。そして実際に行った結果をもって、また審査をします。次のフェーズに行く時もあれば、結果が曖昧だからもう一回調査をしようとなることもあるし、駄目だからやめようとなる時ももちろんあります。

  自社で全ての事業を実施するのではなく、パートナーシップの中でプロジェクトを回したり、ある程度を自社で行ったらそれ以降のフェーズはお任せというものも多いです。きちんと効果を出した事業でないと、パートナーには関心を持ってもらえないです。だから、コペルニクが評価をするという面もあります。

 実証実験を行うための資金は、支援者の方からいただいた寄付を用いることもありますし、実際に事業をするとなった際にパートナーが実証実験にも予算をつけてくれることもあります。実証、つまりは事業評価に資金を使うということは、自分たちからパートナーに「こういうことに資金を使います」と言ってきましたが、正直、理解してもらうのに苦労することもありました。

 

3、社会的インパクト・マネジメントの実施により、どんなよいことがありますか。

 現場に効果のある事業だけをきちんと残していけるというのもそうですし、資金調達をする時やパートナーを獲得する時に、自社のプロジェクトをよく説明できるようになりました。もっと沢山の方に取り入れてほしいです。こういう取り組みを行うとなると、資金・人手・時間の問題で、中々手をつけられないという団体も多いと思いますが、私たちの手法は、現場に沿った、かつ比較的お手軽にできるものなので、同業者の方々に広げていきたいと感じています。

4、社会的インパクト・マネジメントを実施する上で課題に感じていることは何ですか。

社会的インパクト・マネジメントについて理解をしてくれる人がまだまだ少ないということや、そのための資金が集まらないということはあると思います。ただ、それは新しいことなので仕方がないし、逆に私は、そういった状況をチャンスと捉えています。できる人しかできていないのが現状ですが、それでも発信していると、興味を持ってくくれる人が増えたり、風向きが変わってくるので、皆で協働しながら広げることができたらいいなと思っています。実際、「リーンな実証実験を広めたい」と発信していたら、ある大学からお声がけを頂きました。

また、行政や税金の使い方が変わらないとNGOも実践するようにならないといった課題感や、資金提供者側に評価を行える人材がいないといった課題も感じているので、行政や資金提供者側への働きかけも行っています。

インタビュー実施日: 2020年4月23日
インタビュイー  : 一般社団法人コペルニク・ジャパン 
           代表理事 天花寺宏美様
インタビュアー  : ケイスリー株式会社 熱田瑞希
           EY新日本有限責任監査法人 高木麻美

 

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