SIMI:取り組み事例

【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」

2020年09月07日

社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(以下、SIMI)では、7月1日に、「~緊急時における社会的インパクト・マネジメント~『3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定』」を開催しました。
(開催案内はこちら

本開催レポートは、当日のディスカッションを書き起こし、整理したものです。
全6回に分けてお届けします。

【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」
(1)団体活動紹介「東の食の会」
(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」
(3)団体活動紹介「サステイナブル・サポート」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント


鈴木 綾氏

こおりやま子ども若者ネット 代表

鈴木)高橋さんのお話を聞いて、スケールが大きいですね。私どものネットワークは決算が50万円ぐらいの本当に小さな組織ですので、規模もイメージしながら聴いていただけたらと思います。

コロナ前

 「こおりやま子ども若者ネット」は、2018年に9団体で発足したネットワーク組織で、今は16団体と3個人で構成しています。主に社会的排除の解決を目指している団体が多く、長年活動していますが、単一団体ではなかなか地域が変わっていかない、目の前にいる子ども・若者が本当にハッピーになっているとは言い難い現実があります。そこで、みんなで組んで活動することで、地域の編み直しをしようということで2年前に組織化しました。活動目的として、社会的排除を解決し、子ども・若者の「参加」「自己実現」「多様性」を尊ぶ地域社会を実現する、ということを掲げています。

 僕らの特徴として、子ども・若者たちをサービスの対象だと思っていないということがあります。子ども・若者も仲間として、活動を共に創る人々だと考えて、一緒にやってきています。

 ネットワークのアウトプットとしては、「子ども若者育成支援推進法」という法律のもと、市町村の中で子ども若者計画を立て、子ども・若者支援地域協議会を作ることを目指してます。単年度の委託事業の取り組みではなかなか解決できないことに対して、地域の人たちや多くのステークホルダーと共に計画を作るために活動しています。普段の活動は、連携団体の課題共有、地域課題の発見、また啓発イベントやロビー活動を行っています。

●コロナ後

 コロナ禍の活動のきっかけは、2月27日に急に政府から休校要請が出たことです。みなさんもびっくりしたと思うのですが、僕らも混乱しながら、学校がどのような取り組みや対応をしているのかなど、情報収集・意見交換をしました。その時点で「居場所が必要なのではないか?」という仮説が立っていたのですが、それは本当に必要なのか、もし開設するのであれば条件を満たせるのか等、電話等で話し合いました。

 3月2日に休校開始となり、その日に会合で居場所を開設するということを決定しました。3月6日に学童のような「こわか広場」として、子どもたちの居場所を確保しました。

 その後、3月23日に閉所しました。春休みが3月24日からだったため、あくまでも居場所づくりは休校要請に対応する取り組みとして位置づけ、休校期間中を射程に活動しました。4月に緊急事態宣言が出された際にも意見交換を行い、この時は最終的には子どもの居場所を開設しませんでした。後ほど開設しなかった理由をお伝えします。

 私は2011年3月の東日本大震災を経験しています。あの時も子ども系のNPOをやっており、県内11カ所で避難児童の居場所を開設しました。その時に実感したのが、日常で周辺化された子どもたち、日常でリスクが高い子どもたちと言うのは、震災時にリスクが増すという実感があります。災害は全員に訪れるのですが、影響が特に顕著に表れる層がいる、ということを体感しました。僕らのネットワーク内の福祉相談員・スクールソーシャルワーカー・フリースクールスタッフも、「あの時と同じようなことが起こるのではないか」という危惧があり、「やはり居場所を開設しましょう」ということになりました。

 悩んだ点としては、居場所のための場所がない、薬局のマスクやアルコールが売り切れている、電話がないのでどこで申し込みを受け付けるのか、スタッフもいなし、開設予算もない、現場責任者がいないなど、多くありました。

 また判断基準として、閉所の基準と感染症管理をどうするのか、子どもの安全管理、予算をどうするのか、見切り発車で良いかなどを議論しました。特に現場責任者を置けるかどうかは大きなポイントで、子どもたちを預かる際には何かしら現場での判断が必要になります。トラブルも起こるし、その時に何が起こるか想定できないので、現場責任者が置けるかというのも開設に向けた判断基準として議論しました。

 最終的にはこれらをクリアすることができました。現場責任者はネットワークの中に元教育長の方で、教育分野のリスクマネジメントのプロという方が引き受けてくださいました。安全管理に関して、子ども分野ではスタッフが加害者になる場合もあり得るので、スタッフを二名以上配置することにしました。閉所基準は、市中感染が見つかったら閉所、ただ感染経路が分かるものに関しては内容を確認してからとしました。居場所で行うプログラムは毎日子どもたちにやりたいことを付箋に書いてもらい一緒に作っていくことにしました。居場所の開設のお知らせは、ローカル新聞・Web・各ワーカーの案内などで各支援員の方に届けてもらいました。

 実際に開設して、「やっぱり開設する必要があったな」と思っています。

 一つ大事な方針がありまして、「居場所開設の周知はするけれども誘導はしない」ということを決めていました。これは東日本大震災の経験があります。今もですが、コロナに対する意見は人によって分かれると思っています。東日本大震災の時に、外には放射能があるかもしれない状況下で、居場所へ行くか行かないか、避難するかしないかで、個人個人がとても悩みました。その時に支援者が「ここがいいですよ」「ここに来てください」と言うと、親子の間やコミュニティの中で、引き裂かれるという事例が起こりました。そのことを思い出し、今回僕らは「開設はするけども、来るかどうかの判断はご本人たちがしてください」ということで周知しました。活動の指標を、“居場所という機会をつくる”という事にして、参加人数は指標から外しました。居場所をご寄付で開設したのですが、寄付者にも最終的に参加人数をお知らせしないと最初に決めて、行ないました。

 3月23日に閉所しまして、4月の緊急事態宣言の際に子どもたちの様子を聞いたところ 、2月の時のように急な休校ではなかったので、居場所を見つけられていたり、また居場所を作ってくれた団体があったので、私たちネットワークとしてやる必要はないということになりました。

 これらの学びをまとめました。平時から行動原則を共有していた、子どものニーズを真ん中にする文化があった、ニーズのどの部分が自らのネットワークの領域かを自覚していた、平時から子どものニーズを自覚している人がいる、実践者の集団なので現場裁量の必要性も分かっていた、責任を果たせる専門性を持っているメンバーがいた、サービスではないとの考え方が共有できていた、ということがあります。

 以上、小さな取り組みでありますが、このようなことやっていました。

(「こおりやま子ども若者ネット」からの活動紹介は以上です。)


【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」
(1)団体活動紹介「東の食の会」
(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」
(3)団体活動紹介「サステイナブル・サポート」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント

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