SIMI:取り組み事例

2020年09月07日

【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」(1)団体活動紹介「東の食の会」

社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(以下、SIMI)では、7月1日に、「~緊急時における社会的インパクト・マネジメント~『3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定』」を開催しました。
(開催案内はこちら

本開催レポートは、当日のディスカッションを書き起こし、整理したものです。
全6回に分けてお届けします。

【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」
(1)団体活動紹介「東の食の会」
(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」
(3)団体活動紹介「サステイナブル・サポート」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント


高橋 大就氏

一般社団法人東の食の会 事務局代表 

高橋)「東の食の会」は東日本大震災の直後に設立した団体です。大震災の津波と放射能事故で大きな打撃をこうむった東北の岩手・宮城・福島の三県にて、食産業の生産側である農業・漁業・食品加工業の復興、そして新しい産業をどう興していくのか、ということに取り組んでいます。

●コロナ前

 以下4つのことをやっていました。

〇「販路を創る」
 震災直後に販路がほとんど失われたので、それを一つ一つ回復させてきました。漁師や農家の人とバイヤーの方を直接繋げていく、バイヤーを直接産地へ連れて行き商流をつくる、東京のデパ地下の催事への出店、食の都パリで東北の食の魅力・文化や想いを伝えるなどやってきました。

〇「商品を創る」
 新しいブランド鯖の缶詰「サヴァ缶」は、累計で800万缶、30億円を売り上げ、岩手を代表するお土産になりました。
 その他、海藻「アカモク」、福島の甘酒「麹の美容ドリンク Cozy Beauty」、福島の伝統的漬け床「358 (サゴハチ)」、りんご酢サイダー「リンゴスター」、ほやの缶詰「ホヤ缶」、会津の「清水薬草店のお茶」などをリブランディングしたり、販路開拓をしています。
 また東北全体をかっこいいワクワクする地域にする企画として、6県の地元産品をロール状の食品として新たに開発し「6県ROLL(ロッケンロール)」というプロジェクトを立上げ、ロールケーキ、ロールステーキ、ロールクッキーなどを開発しました。

〇「ヒーローを創る」
 一番大切なのは生産者なので、ヒーローをどんどん生み出す仕掛けをつくっており、三陸の水産業者のマーケティング・ブートキャンプ「フィッシャーマンズ・キャンプ」を立上げ、そこから宮城で「フィッシャーマン・ジャパン」という団体が生まれ、さらに県境を超えた「フィッシャーマンズ・リーグ」ができました。その後、福島の農業者の「福島ファーマーズ・キャンプ」も始まり、メディアにほぼ毎日のように福島の農家がヒーローとして登場するようになってきています。

〇「コミュニティを創る」
 生産者と消費者のコミュニティをつないで行くため、漁師とのディナー会開催、都内のレストランにて福島の農家・漁師のイベント開催、ウェブサイトでのストーリー掲載などを行っています。また、東北で、食産業にかかわらず東北で産業やコミュニティづくりを実践しているリーダーたちが毎年1回集まって「東北リーダーズ・カンファレンス」を開催しており、リーダーたちがくじけず突き抜けられるようにリーダーのコミュニティを創るとともに、具体的なアクションを生み出しています。

以上4つを、基本的に東北の食産業、主に一次産業と食品加工業の復興、産業づくりとしてやってきています。

●コロナ後

 色んなことが変わり、それに対応していかなければならなかったですね。やるべきことが変わり、手法が変わる。WhatとHowの両方を変えていきました。

〇飲食店を支援する
 今までは食産業で言えば川上にあたる農業・漁業・食品加工業を、川下の飲食店・消費者と一体になって支援していたのですが、コロナで一番大変になったのは飲食業でした。飲食業・レストラン・シェフ、そういった方々が一番苦しいという状況になったので、我々がやるべきことは大きく変わりました。東北の生産者たちと「あの時助けてくれた飲食店を応援しよう」と飲食店の「みらいチケット」を売り、そこに抽選で東北のすごい生産者たちのすごい食材が大量に無料でもらえるというキャンペーンを行いました。生産者から“飲食店を応援している”というメッセージを送り、生産者たちのファンにも飲食店を応援してもらいました。

〇生産者を支援する
 生産者の中にも販売チャネルによっては大変な方がおり、例えば飲食店、学校給食、高級なデパートなどへの卸を行っていた方は苦しい状況でした。そこでオンラインを使って様々な企画を行いました。例えば、「うち旅クッキング」という農家をバーチャルで訪問する企画は、福島県相馬で野菜・豚・鳥を育てている農園を子どもたちが訪問しました。みんなでズームインして降り立つとかっこいい農家さんが出迎えてくれ、子どもたちと農園の卵を使ったマヨネーズを作りました。また、ホヤ祭り「うちでホヤろう」という企画では、オンラインで産地と家庭を繋ぎ、ホヤ漁師とシェフが登場してホヤの料理を作る、というオンラインキッチンを開催しました。

〇より脆弱な人を食で支援する
 生産者の仲間と話し合う中で「苦しんでいる人がいる。自分たちのところには食料はいくらでもあるからそれを送りたい」という話が出ました。実は北海道と東北は日本で食糧自給率が100%を超えています。そこで、ETICさんと組んで、コロナで真っ先に影響を受けた社会的な弱い立場にいる方々、特にひとり親家庭とホームレスの方へ食糧を送る活動を開始しました。
 ひとり親家庭の人はかなり影響を受けやすくて収入が大きく減った方々がおり、アンケートを読むと本当に切実で、1日一食で我慢しているお母様がいらっしゃるなど非常に切迫した状況で、我々も緊急的に食糧を送っています。

〇東北の学びを世界へ
 今までは「東北の産業をどう復興させようか」という課題へチャレンジしてきたのですが、その点も大きく変わりました。“復興”と言えば、もう東北の復興ではなく、コロナからの復興です。東北の学びをどうコロナ禍に活かすのか。また世界中で社会が分断している時に、東北はロールモデルとして学びをどう世界へ伝えられるのか、というテーマを議論し始めています。「東北はもう支援される側ではない、これからはロールモデルとして新しい社会を引っ張っていくんだ」という趣旨でカンファレンスを開催し、社会の分断や困難を乗り越えてきたルワンダ、アチェ、ニューオーリンズの方を招き、復興の先進事例として、世界は彼らからコロナ禍で学ぶことがあるはずだということを共有しました。

 

 コロナを受けて大きくフェーズが変わりました。東北の食産業の支援は、もちろん福島、特に水産業を含めやるべきことはまだあるのですが、それだけでなく、コロナからの復興に向けて東北の学びをどう世界へ役立てるのかを、考えていくフェーズに入ってきていると思います。

(「東の食の会」からの活動紹介は以上です)


【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」
(1)団体活動紹介「東の食の会」
(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」
(3)団体活動紹介「サステイナブル・サポート」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント

TOPに戻る