SIMI:取り組み事例

2020年08月17日

【取り組み事例】Switch

Swtichは宮城県仙台市を拠点とする認定NPO法人です。Switchでは、全ての人たちが学び、働き、共生する場の提供を目指して、就労支援や就学相談等を行っています。

理事長の髙橋由佳氏、事務局長の今野純太郎氏に社会的インパクト・マネジメントの取り組みについてお話しを伺いました。

■カテゴリ

事業分野障害福祉サービス、就労支援
事業開始年2011年
組織形態認定NPO法人
組織規模16人

■基本情報

事業名称・障害福祉サービス事業「スイッチ・センダイ」(2011年6月~)「スイッチ・イシノマキ」(2015年5月~)
・ユースサポートカレッジ(困難を抱えた思春期・青年期の就学・就労支援)「仙台NOTE」「石巻NOTE」
実施地域宮城県
事業概要・障害福祉サービス事業:必要なことを習得するための各種プログラム、見学や実習、 進路選択等のオリジナルなサポートをひとりひとりに合った形で行う就労支援、自立訓練(生活訓練)事業。
・ユースサポートカレッジ:高校生や専門学校生、大学生(既卒者含)を対象とした個別相談、就学、就労等の進路決定のサポート事業。
運営団体認定NPO法人Switch
事業URLhttps://www.switch-sendai.org/

■社会的インパクト・マネジメントの概要

はじめたきっかけ・障害福祉サービスの枠に当てはまらないがゆえに、支援が行き届かない「グレーゾーン」の方に対する支援や組織の軸を検討する中で、改めて組織や事業の社会的価値を見直す必要があったため。
実践内容・事業関係者からのヒアリングと現場ニーズの把握
・定性的な評価(支援対象者にフォーカスしたストーリー)と定量的な評価の実施
・中長期計画(3年間)の策定と改善(デロイトトーマツ協働)
取り組んでよかったこと・組織のビジョン・ミッションとすり合わせた事業対象の設定や方向性の再検討ができたこと。
今後の課題・法人内でのインパクト・マネジメント実施意義の共有と理解の促進
資料URL・平成29年度(2017年度)事業報告書
https://www.switch-sendai.org/about/pdf/2017report.pdf
・平成30年度(2018年度)事業報告書
https://www.switch-sendai.org/about/pdf/2018report.pdf

社会的インパクト・マネジメントの取り組みインタビュー

1、社会的インパクト・マネジメントをはじめたのはなぜですか?

 私たちはもともと、組織収益の柱として、障害福祉サービス事業を行政からの給付金を受けて実施していました。しかし一方で、社会的弱者と呼ばれる人の中でも、障害福祉サービス事業の枠に当てはまらないがゆえに支援が行き届かない「グレーゾーン」の方が多く存在していることが、現場のニーズを調査する中で分かりました。このような状況の中で、セーフティネットから零れ落ちてしまう「グレーゾーン」の人たちに対して、私たちにできることが何かあるのではないかという声が上がっていました。

 また、変化が多い時代だからこそ、自分たちの掲げるビジョン・ミッションは柔軟に見直していく必要があるのではないかという考えもありました。こうした議論の中で見えてきた軸とすり合わせながら実施事業を検討する中で、これまでの障害福祉サービスの枠には当てはまらない人々を対象にした自主事業を行うことにしました。しかし、その領域の事業は政府の予算も入っていないため、自分たちで試算したデータをもとに、行政や民間団体からファンドレイジングしていかなければなりませんでした。そこで、委託元や寄付元となる資金提供者へと働きかけていくためにも、自分たちのインパクトを評価指標として見せていく必要があったのです。

2、課題やアイデアはどのように把握し、事業として実施するかどうかをどのように判断していますか?

 現場レベルでニーズがあるかないかが最初の判断基準になることが多です。つまり、受益者の声、困りごとがあるという現場の声から事業がスタートしています。管理職と理事が定例で集まる執行部会で話し合い、アイデアを揉んでいきます。

 広いビジョン、ミッションを掲げているために、自分たちでどの事業をやるべきかやらないかを選択する時に迷うときもあります。そういう時は、現場のニーズをもとに考えていきます。つまり、なるべく現場のニーズに沿うように進めています。その結果、事業が広がっていきました。何を実施して、何を実施しないかの判断はすごく難しいです。

3、ビジョン、ミッションの見直しについて教えてください。

 ビジョン、ミッションは、変化が多い時代だからこそ(コロナの状況に限らず)、毎年考えてもよいくらいではないかという話が出ています。団体としてのスタートは、メンタルヘルス上の問題を抱えている方が対象でした。それに加えて、困窮世帯、精神疾患を発症しているであろう若者へのアウトリーチ支援が必要かどうかは、ロジックモデルの中で、自分たちの軸とすり合わせながら進めてきたという実態があります。

 障害者手帳を持っていないグレーゾーンの方が増加しているのかどうか、社会的弱者で困難を抱えている方について調査をしました。その結果、支援が届かないグレーゾーンの方が多いことが分かりました。グレーゾーンの方を支援するためには、ビジョンを見直することが必要ということになりました。その方がスタッフ自身も取り組むべき社会課題をよく理解したうえで、自分事として支援できるためです。

 ただし、ビジョン、ミッションの見直しと合意形成については、コロナの状況もあり現在はペンディングしています。

4、何を成果とし、どのように評価していますか?

 定性的な評価と定量的な評価を分けて実施しています。定性的な評価というのは、いわゆる対象者のヒアリングや彼らがどのように変化していくかをストーリーとして追いながら計測していくことです。一方で、定量的な評価として、事業所への来所日数や、(就職移行支援では)就職率等も計測しています。

 時として、私たちが給付を受けている行政に対して示さなければならない評価と、実際に大切にしている事業軸に基づく評価が、見えやすい形で表せないこともあるのが難しいところです。例えば、障害福祉サービス事業においては、その支援対象者の属性や置かれている状況がある程度揃っているため、対前年度比でどのくらい成果が上がったのか、あるいは、事業を通して達成すべきゴールにどのくらい近づいたのかが比較的計り易くあります。

 一方で、自主事業で大切にしているゴールは、必ずしも就職率のようなわかりやすく提示できるものではなく、その人自身の自己実現に関する事だったりします。ある人にとっては、「安心・安全」がゴールになることもあるし、ある人にとっては「何かしらの行動を起こせたこと」がゴールになることもある。それゆえに、一人ひとりのライフプランに合わせたゴール設計が必要になるのです。必ずしも「就職すること」がゴールではない、こうした伴走型の事業においては横串で事業の成果を計り、提示することができないのが現状です。

 それゆえに、相談者が私たちのサポートを受けたことで、「その人の周りにどのような変化が生まれたのか」といったことも含めた事業のあらゆる方面での寄与率を見ていく必要がありますし、そこをどう計るのかについては、検討の余地がまだまだあると考えています。現在では、そういった周りの変化やその人自身への効果について、数字の評価に加えて、コラム的に変化の過程をストーリーとして掲載することで、一つの評価として見せるようにしています。

5、評価結果はどのように活用していますか?

 事業運営で関わりのある学校や、関係者から直接ヒアリングして、自分たちに求められているニーズを把握し、事業の改善や新たな事業の立ち上げに活かしています。現在4つの事業所(仙台2、石巻2)で活動を行っていますが、各事業所での活動を年に1度、事業報告書にまとめています。また、コンサルタントと協働で、組織の3か年計画を策定しました。実際には、事業を実施していく中で変化も多く、計画通りに進めていないこともありますが、都度修正しながら実施しています。特に、障害福祉サービス事業と自主事業では評価軸や見せていくべき(見せたい)成果も異なるため、それらを測り、事業の改善につなげていくということは難しくもあります。

6、今後の課題は何ですか?

 組織のビジョン・ミッションに関する課題として、「自分たちがこのNPOとしてやるべきことは何か」を組織の上部の人だけでなく、現場で働く職員も含めて考えられるようになることです。障害福祉サービス事業は、施設運営を行うことが中心であり、その運営だけで十分に何かしらの成果を社会に生み出しているといえると思います。しかしそれだけではなく、「なぜ私たちが」「この対象に向けて」事業を行う必要があるのかという視点から、自分たちの事業を俯瞰的に考えることができるようになれば、もっと日々活動している現場の人たち自身が社会に生み出す自分たちの価値を考える事ができるようになると思うのです。そうする事によって、目の前の取り組みへの意識も変わってくるように思います。

 評価にリソースを使うのであれば、その分を支援に投入すべきという意見が現場からは聞こえがちです。しかし、事業のインパクトを評価し、マネジメントしていくことがどれだけのプラスの効果を生み出すのかを、現場の職員も含めた全員が自分事として考え、インパクト・マネジメントをするためのエネルギーと目の前の支援事業を運営するためのエネルギーの配分を真剣に検討していく必要があると考えています。

インタビュー実施日: 2020年4月28日
インタビュイー  : 認定NPO法人Switch
            理事長 髙橋由佳様
            事務局長 今野純太郎様
インタビュアー  : EY新日本有限責任監査法人 高木麻美
           CWS Japan 五十嵐豪
           NPO法人WELgee 渡辺早希

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