SIMI:取り組み事例

2020年07月20日

【取り組み事例】こども宅食

 「こども宅食」は、2017年に6つの団体と自治体がコンソーシアムを組み、活動することで、生活の厳しい子どもの家に、定期的に食品を届ける仕組みとして活動を開始しました。
 食品のお届けをきっかけにつながりをつくり、見守りながら、食品以外の様々な支援にもつないでいます。

 コンソーシアムのメンバーであり、事業評価を担当している、日本ファンドレイジング協会の鴨崎貴泰氏と川合朋音氏に、社会的インパクト・マネジメントの取り組みについて、お話しを伺いました。

■カテゴリ

事業分野子育て支援・貧困対策
事業開始年2017年
組織形態複数の運営団体によるコンソーシアム
組織規模

■基本情報

事業名称文京区子ども宅食プロジェクト
実施地域東京都文京区
事業概要コンソーシアムを形成し、文京区内の経済的に困窮する子育て世帯(児童扶養手当、就学援助、0歳から高校生世代の子どもがいる生活保護の受給世帯)のうち、希望者に対して定期的に食品等を届ける。
運営団体村上財団【個人寄付等ファンドレイジング】
RCF【事業推進・調整】
キッズドア【物流計画・実施管理/利用世帯配送管理】
日本ファンドレイジング協会【社会的インパクト評価】
文京区【ふるさと納税受付・管理/対象者への案内業務】
フローレンス【事業推進・調整/広報/申込受付・管理/提供企業の開拓・交渉業務】
セイノーホールディングス【食品等の保管・配送/利用世帯の見守り】
事業URLhttps://kodomo-takushoku.jp/

■社会的インパクト・マネジメントの概要

はじめたきっかけ様々な主体が社会課題解決における共通のアジェンダを設定し、コミットする「コレクティブ・インパクト」を意識していたので、異なる主体がともに目指す成果を可視化することが必要だった
実践内容•ロジックモデルを作成し、アウトカム、指標を設定。利用世帯へのアンケート等による測定。
•評価結果に基づいた事業の見直し
•インパクト・レポートや報告会等をとおして、支援者への活動成果、課題を報告
取り組んでよかったこと•支援者の事業への理解、対象世帯の実態への理解の向上
•コンソーシアム内で評価に関する理解及び評価リテラシーの向上
今後の課題•インパクト・マネジメントを志向する組織文化の浸透
•測定方法、活動のモニタリング方法の改善
資料URL2018年度インパクト・レポート
https://kodomo-takushoku.jp/archives/2537

2019年度インパクト・レポート
https://kodomo-takushoku.jp/archives/4065


文京区子ども宅食プロジェクト

社会的インパクト・マネジメントの取り組みインタビュー

1、社会的インパクト・マネジメントをはじめたのはなぜですか?

 事業開始当初より、コンソーシアムという事業体でプロジェクトを実施することから、様々な主体が社会課題解決における共通のアジェンダを設定し、コミットする「コレクティブ・インパクト」を意識していました。異なる主体がともに目指す成果を可視化するため、最初から社会的インパクト評価をしようということになっていました。

 事業は2017年10月から開始しました。当初は社会的インパクト評価をするということが主眼で、社会的インパクト・マネジメントではありませんでした。ただ、振り返ってみると、評価の中にも社会的インパクト・マネジメントの概念が入っていたと言えると思います。つまり、事業成果を評価しながらも、評価結果を出すことだけにとどまらず、それを事業の改善に活かしていきたいという思いがありました。

2、社会的インパクト・マネジメントとして、具体的には何をしているのですか?

ロジックモデルを作成し、指標を設定し、利用世帯へのアンケート等をとおして測定しています。新規性の高い事業であったので、ロジックモデルで示す仮説通りにはいかないだろうという予想が当初からあり、毎期ごと、アンケート結果をもとにロジックモデルを見直しています。

 ロジックモデルのたたき台は日本ファンドレイジング協会(JFRA)が作成し、ワークショップなどを行い、コンソーシアムのメンバーからの意見を集約し、完成させています。初年度は、「こんなアウトカムが期待できるかな」という予想をベースに作成しました。2年目からは実際の評価結果や事業の実施状況をもとに見直しを行っています。この工程を繰り返すことで、コンソーシアムメンバーの評価に関する知見、評価リテラシーが向上したように感じます。

  指標については、先行研究や他調査で用いられているものと、本プロジェクトのために独自に作成したものとが含まれています。既存の指標を使用しているのは、それらが使用されている先行研究の評価結果との比較をするという狙いがありました。食事内容の変化や精神状態の変化に関する指標は先行研究を活用しています。独自で作成した指標としては、宅食を利用したことにより節約できた時間や金額、それにより追加でできたこと、などがあります。

3、どのような体制で事業を実施しているのですか?

 事業の実施体制は、コレクティブ・インパクトをモデルにしています。コンソーシアムに参加している事業者の強みを持ち寄るというかたちです。こども宅食に関わる事業者は、それぞれ役割が決まっています。JFRAは評価の仕組みの構築とアンケートによる事業成果の測定を担当します。JFRAもコンソーシアムの参加組織なので、第三者評価ではありませんが、その様な視点からの評価も担っています。JFRAが行う評価業務は、貧困問題が専門の有識者、評価が専門の有識者にも協力してもらい行っています。

4、社会的インパクト・マネジメントを実施して、どのような良いことがありましたか?

 事業の最初から、事業サイクルに評価も組み込み、評価とその結果をマネジメントに活かすということを合意して始めることができたのが良かったと思います。それにより、コンソーシアム内で評価に対する理解、評価リテラシーも徐々に高まってきています。

 評価結果はインパクト・レポートとして公開すると共に、支援者に対する報告会でも説明しています。報告会の参加者からは、良い反応が得られました。もっと協力したいという意見をたくさんいただきました。これからも、評価結果を活用し、ステークホルダーの理解を深めていきたいと考えています。

5、今後の課題は何ですか?

 1つは、自治体の予算編成スケジュールに拘束されるため評価結果が出る前に次期の予算を策定する必要があり、事業成果を予算配分などにタイムリーには反映させることができないことです。また、こども宅食の利用世帯にとって、過度な負担にならない測定方法(アンケート)、インパクト・レポートの内容や事業のモニタリングの方法の改善も課題だと考えています。

 インパクト・マネジメントを志向する組織文化の浸透にはまだ時間がかかると考えていますが、評価結果がコンソーシアムが事業を進める上での指標となり、メンバーが同じ方向に向かっていくための道標になると良いと思います。

インタビュー実施日:2019年9月3日
インタビュイー  :特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 
          事務局長 鴨崎貴泰様
               川合朋音様
インタビュワー  :ANEW Holdings株式会社 山中資久
          公文教育研究会 菅野孝一
          EY新日本有限責任監査法人 高木麻美

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